システム奮闘記:その106

LANケーブルの規格 CAT(カテゴリー)



Tweet

(2016年11月14日に掲載)

LANケーブルの規格 カテゴリ(CAT)

 LANケーブルには2種類ある。  ストレートタイプとクロスタイプ  だが、それ以外に種類がある事は知らなかった。  長さと色の違いぐらいだと思っていた。  ところが調べてみるうちに・・・  カテゴリという規格があった!!  だった。  その違いは  伝送速度や伝送帯域の違い  だった。  LANケーブルの種類|イーサネット規格とカテゴリ  LANケーブル - ELECOM | LANケーブル  LANケーブルが変わると速度がどれほどアップするか38種類テスト結果まとめ - ライブドアニュース  ASCII.jp:銅線の限界に挑む10GBASE-Tの仕組みとは? (2/2)|入門Ethernet  UTPケーブル・STPケーブル | LANケーブルの種類と規格・カテゴリの違い  Networkキーワード - 10GBASE-T:ITpro  冨士電線-LAN関連ケーブル(メタル)  LANケーブリング入門 ケーブリングの規格と要求されている電気特性  特別企画 最新ネットワークケーブル事情 UTPはギガビットの時代へ 〜1000BASE-Tの登場〜 (@IT)
LANケーブルの規格
CAT3 最大周波数16MHz。
10Base-Tで10MBpsを実現。
CAT5 最大周波数が100MHz
100Base-TXで100Mbpsを実現。
CAT5e 「e」は「enhanced」で「拡張」の意味だ。
最大周波数はCAT5e同様、100MHzだ。1000Base-Tで使える。
CAT6 最大周波数250MHz。
1000Base-TXで、1Gbpsを実現。
CAT6a 「a」とは「Augmented」で、「増大」の意味だ
最大周波数が500MHzだ。
CAT7 最大周波数600MHz。
ノイズを減らした。10GBase-Tで使える。

 だが、カテゴリの事なんぞ知らなかったため

 値段だけでケーブル買っていた!!

 のだった。

 値段さえ安ければ良いという感じで買っていた。
 ストレートかクロスかの違いは見ていましたが・・・。


 社内LANの高速化のために、1Gbpsの高速ハブを買ったのだが
LANケーブルにカテゴリがあったのは知らなかったため
LANケーブルは社内にあった物を、そのまま使っていた。

 そこで使っているLANケーブルを確かめていくと・・・


社内で使っていたLANケーブル
CAT5eのLANケーブル
CAT5eのLANケーブルを使っていた。
こんな所にLANケーブルの規格(カテゴリ)が書いているとは
想像すらしていなかった。

 LANケーブルを見ると、カテゴリがケーブル上にも表記されている。

カテゴリがLANケーブル上にも表記されている
カテゴリがLANケーブル上にも表記されている
CAT5eのケーブルなので表面に「CAT5e」と書かれている。

 昔から使っているLANケーブルもあるので色々見ていくと・・・

 CAT5のケーブルを使っているやん!!

 だった。
 これでは折角の1GBpsの高速ハブが台無しだ。

CAT5のLANケーブル
CAT5のLANケーブル
100Mbpsまでしか対応していないCAT5のケーブルが使われていた。
伝送速度1GBpsでは対応していないため、本来の能力が発揮できないのだ。

(注意)
私自身、誤解していた事だが、CAT5は100Mbpsまで対応していないから
100Mbpsの通信しかできないと思い込んでいた。
だが、LANに詳しい人から聞くと、100Mbpsというのは
ケーブルが100mの場合の通信速度の保証という意味なので
LANケーブルが短い場合だと、CAT5でも、1Gbpsの通信は可能なのだ。

「CAT」の通信速度の保証は、100mの長さでの保証という意味なのだ。

 LANケーブルも時代と共に進化している。
 その事を全く知らず、古いLANケーブルを使い続けると
折角、ハブを最新の物にしても、そのハブの真価は発揮できないのだ。


UTPとSTPの違い

 LANケーブルにはCAT(カテゴリ)という種類だけでなく UTP(シールド無し)とSTP(シールド有)の違いがある。  CAT(カテゴリー)の違いと合わせて、UTPとSTPの違いを見ていく事した。

CAT5e

 CAT5は滅んだと勝手に考えて、CAT5eのケーブルを見てみる。
CAT5eのLANケーブルの断面
CAT5eのLANケーブルの断面
特に何もなく、撚り対線が4組入っている。

 この場合、お互いが出す電磁波(ノイズ)の影響を受ける上
外部からの電磁波(ノイズ)の影響も受ける。

CAT5eのLANケーブルの問題点
CAT5eのLANケーブルの問題点
より線同士のノイズの影響を受けやすい。
それだけでなく外部からのノイズの影響も受けやすいのだ。


CAT6とCAT6e

 少し改良したのがCAT6とCAT6eのLANケーブルだ。
CAT6とCAT6eのLANケーブルの断面
CAT6とCAT6eのLANケーブルの断面には十字介材がある
十字介在と呼ばれる、十字の壁があるのだ。
これにより、撚り対線同士の距離をとり
少しでもお互いの電磁波の影響をなくそうとしている。

 十字介在を入れる事によって以下の利点があるのだ。

CAT6とCAT6eに使われている十字介在の役目
CAT6とCAT6eに使われている十字介在の役目
十字介在で撚り対線同士の間に距離が出来る。
これにより電磁波の影響を少しでも抑えようというのだ。

 だが、CAT6とCAT6eでは問題点が残っている。

CAT6とCAT6eの問題点
CAT6とCAT6eの問題点
外部からの電磁波(ノイズ)の影響は受ける。(エイリアントーク)
十字介在で少し距離が出来たとはいえ、撚り対線同士の影響はゼロではないのだ。

 隣のLANケーブルから出る電磁波の影響の事を

 エイリアントーク

 というのだ。


 ところで、CAT5eとCAT6とCAT6e。
 ノイズのアルミや銅などの防護壁がないケーブルの事を

 UTP(Unshielded Twist Pair cable)

 というのだ。

 日本語に訳すと

 防護壁のない撚り対線

 なのだ。そのまんまなのだ。

例外はある
CAT5eであっても、LANケーブルの製造会社によっては
STP(シールド有)のケーブルを製造している所がある。
ノイズ対策のためなのだ。


CAT6a

 そこでCAT6aには次の工夫がされている。
CAT6aのLANケーブルの断面
CAT6aのLANケーブルの断面
ケーブルの外側を金属の防護壁で覆っているのだ。

 外側を金属の防護壁で覆う事により以下の効果を生んでいるのだ。

外側を金属の防護壁で覆う事で得られる効果
外側を金属の防護壁で覆う事で得られる効果
外部からの電磁波を防ぐだけでなく、内部で発生する電磁波を
外部に出さない役目を果たすのだ。

 これによって

 エイリアントークの影響を減少させる

 というのだ。


CAT7

 そしてCAT7となれば、もっと対策が取られている。
CAT7のLANケーブルの断面
CAT7のLANケーブルの断面
撚り対線ごとに金属の防護壁で覆っている。
そのため内部の撚り対線が出す電磁波により
お互いが電磁波(ノイズ)の影響を受けるのを防ぐのだ。

 CAT6aとCAT7。
 ノイズのアルミや銅などの防護壁があるケーブルの事を

 STP(Shielded Twist Pair cable)

 というのだ。

 日本語に訳すと

 防護壁がある撚り対線

 なのだ。そのまんまなのだ。


 ところで銅やアルミ箔を防護壁にしたらどれくらい効果があるのか。
 電磁波(ノイズ)の減衰度合いの表を見てみる事にした。

電磁波の振幅が0.37倍になる厚み(表皮効果)
電磁波の振幅が0.37倍になる厚み(表皮効果)
「システム奮闘記:その105」(電磁気学入門)の中の導体中で減衰する電磁波表皮効果でも触れたのだが
金属などの導体に電磁波が侵入すると、電磁波が減衰するのだ。

電磁波が高周波であればあるほど減衰が激しくなるのだ。

 銅箔やアルミ箔の厚さを調べてみる。

 シールド銅箔テープ(デンカエレクトロン株式会社)

 これを見る限り、銅箔は20μmの厚さだという。
 ほかにも調べてみると40μmの厚さなどもあった。


 CAT6a以降のケーブルを保護する金属箔を20μmの厚さの銅箔だと考える。

20μmの銅箔だと電磁波の振幅が0.37倍になる周波数は(表皮効果)
20μmの銅箔だと電磁波の振幅が0.37になる周波数は(表皮効果)
表を見る限り、10MHzの電磁波の場合、20μmの厚さで振幅が0.37倍になる。
より高い周波数だと、強い電磁波でない限り、ほとんど銅箔に吸収されてしまうのだ。

表皮効果については「システム奮闘記念:その105」(電磁気学入門)の中にあります。
理論面については導体中で減衰する電磁波をご覧ください。
実際のグラフなどは表皮効果をご覧ください。

 1000Base-Tは1000MHzの信号を送信するが、変調により、100MHz以下の信号になる。

 そのため値段の高いCAT6aやCAT7を買うよりも、安いCAT5eのケーブルを買っても
問題ないと言われたりするのは、そのせいかもしれない。

 だが、10GBase-Tの場合になると、400MHzの信号を送る事になる。
 その場合、金属箔によるノイズ対策が効果的になる。
 それに、変調の際、小刻みな電位差で信号を送るため、ちょっとしたノイズでも
読み取りエラーの原因になりかねない。
 そのため、少しでもノイズを除去する必要が出てくる。

 10Gbase-Tの場合、CAT6a以降を推奨されるのは、そのためなのだ。


IEEE 802.3bz。CAT5eケーブルの朗報

 2016年9月30日、IEEE 802.3bzという規格が承認された。  CAT5eケーブルだと、2.5Gbpsの速度で通信ができるというのだ。CAT6だと5Gbpsだ。  LANケーブルの場合、床下や天井を通していると、交換するのが大変だ。  そのため既存のLANケーブルを活用して、通信速度を上げる事ができるのは朗報なのだ。

A配線、B配線。ANSI/TIA/EIA-568-AとANSI/TIA/EIA-568-B

 調べているうちに、この2つの規格を知ってしまった。  パッチコードの結線の種類でTIA568AとTIA568Bの違い  LAN関連規格 ANSI/TIA/EIA-568-B.*-*  この規格の違いは  LANケーブル内の線の並びの違い  なのだ。  LANケーブル内の8本の線は、それぞれ色が違う。  その色の並びの規定なのだ。  名前が長いので通称として「EIA-568-A」は「A配線」と呼ばれ 「EIA-568-B」は「B配線」と呼ばれているのだ。  標準ではEIA-568-Aだが、CAT6以降でEIA-568-Bを採用しているのもあるという。    CAT5eで使う範囲では違いは、ほとんどないようなので 1000Base-Tで使う程度なら、気にしなくても良いようだ。
LAN入門:目次
ストレートケーブルとクロスケーブル LANケーブルのストレートタイプとクロスタイプの違いを書きました。
リピーターハブとスイッチングハブ リピーターハブとスイッチングハブの違いと、全二重通信と半二重通信の話です。
10Base-T以降では、パケット衝突は、実は擬似衝突などを書いています。
社内LANの調査 2005年に、ブラックボックス化した社内LANを解明した話です。
オートネゴーシエーション 10Base-T、100Base-TX、1000Base-Tなどが混在する環境で
どうやって通信制御を行っているのか
その仕組みを書きました。
LANケーブルの規格 CAT(カテゴリー) LANケーブルの規格のCAT(カテゴリー)の違いを書きました。
データ送信とデジタル信号の符号化 LANケーブルを信号が伝わる際、どうやってデータ送信をしているのか。
デジタル信号の周波数を抑えながら、高速で信号送信する技術を書きました。
10Base-T、100Base-TX、1000Base-Tについて書きました。
データリンク層 LAN内のパソコンや通信機器同士の通信はMACアドレスが使われています。
それを司るデータリンク層について書きました。
表皮効果と近接作用 LANケーブル内で起こっている信号減衰の原因が
表皮効果と近接作用である事と
LANケーブルの撚り線が、ノイズ対策なのを書きました。
ツイストペアとノイズ対策 LANケーブルがツイストペア(撚り線)なのはノイズ対策のためです。
その話を書きました。
差動回路とノイズ対策 LANケーブルは8本あり、データ通信は複線で行っています。
差動回路を使ったノイズ対策の話を書きました。
同軸ケーブルの仕組み 昔のLANに使われていた同軸ケーブル。
現在でもテレビのアンテナに接続する線として使われたりしています。
同軸ケーブルの仕組みや特性インピーダンスの話を軽く触れました。
発振回路 クロック信号を作る発振回路の説明です。
簡単なLC型コルピッツ発振回路を使って説明しました。



目次:「LAN入門 LANの基礎」に戻る
前章:「電磁気学入門」を読む
目次:システム奮闘記に戻る