システム奮闘記:その106
(2016年11月14日に掲載)
はじめに LANケーブルには、大きくわけで、2種類のケーブルがある。 ストレートタイプとクロスタイプがある。 「システム奮闘記:その24」にも、その2種類のケーブルの話を書いたのだが それを書いたのは2003年だ。 2003年の時点では、10Base-Tと100Base-TXが主流だった。 だが、2016年時点では1000Mbpsの1000Base-Tが主流になっている。 そのためLANケーブルの内部の形状が変化しているのだ。 もちろん、そんな事は 知らへんかった!! というわけで、私の浦島太郎ぶりを書きながら ストレートタイプとクロスタイプの違いを書く事にしたのだ。
10Base-T、100Base-TX、1000Base-Tについて
それぞれ通信速度に関する規格の違いだ。
規格の種類 | |
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10Base-T | 最高10Mbps送信可能 |
100Base-TX | 最高100Mbps送信可能 |
1000Base-T | 最高1000Mbps(1Gbps)送信可能 |
これらの違いはLANのデータ通信と信号符号化で触れますので、ここでは単純に 通信速度の規格とだけ頭に入れて欲しいのだ。
ストレートケーブルとクロスケーブルの違い
この2つのケーブルの違いだが、情報機器の接続形態の違いにあるのだ。
ストレートタイプとクロスタイプの違い | |
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パソコンとハブをつなげるLANケーブルが ストレートケーブルが使われる |
パソコン同士をつなげるLANケーブルは クロスケーブルが使われる |
だいぶ昔(20世紀)、この違いを知らなかった。 ある時、社長に呼ばれ、パソコンからパソコンへのデータを移して欲しいと言われ ストレートケーブルで接続して、通信できなく、社長が苦笑いしながら もっと勉強せんとアカンなぁ と言われた事があった。 ストレートケーブルとクロスケーブルの違いを知るきっかけは2002年9月だった。 ある役員のパソコンが壊れてしまった。 その役員の新しいパソコンがWindowsXPだった。 Windows98が主流だった社内に、初めてのWindowsXP。 社内で、私を含めて誰も使い方がわからない。 そこでWindowsXPの本を買って、本を読んでいる際に LANの設定の所に パソコン同士はクロスタイプケーブルで結ぶ と書いていた。 この時、初めてストレートケーブルとクロスケーブルの違いを知ったのだ。 だが、この2つの違いを知らないにも関わらず、LANケーブルを購入して パソコンとハブを接続して、LANを拡張していったのだが 障害は起こらなかった。 運良くストレートケーブルを買っていたのだ。 当時、ストレートケーブルとクロスケーブルの違いを上司に話すと 上司は・・・ 俺も違いは知らへんかった 安い方を買っていた だった。 上司も私も運良くストレートケーブルを購入していたため ケーブルの違いによる通信障害が起こらなかったのだ。
ハブの進歩で、現在では障害が起こりにくくなっている |
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2003年当時は、この2つの違いを知らないと通信ができなかった。 だが、その後、ハブ側で「Auto MDI/MDI-X機能」が搭載した物が出てきた。 ハブ側でストレートケーブルとクロスケーブルの違いを検出する機能で これにより、パソコンとハブの接続の際、誤ってクロスケーブルで結んでも ケーブルの違いを検出して、通信が行えるようにした機能だ。 現在では標準搭載になっているため、ストレートケーブルとクロスケーブルの違いを 全く知らなくても、LANが組めるようになっているのだ。 |
LANケーブルの中は8本線
ストレートケーブルとクロスケーブル。 まっすぐ(ストレート)と交差(クロス)の違いなのだが それを説明する前に、LANケーブルの中の状態を知る必要がある。 LANケーブルの中には8本の通信線がある。
LANケーブル内には8本の通信線がある |
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LANケーブルの中には、4本の対になったケーブルがあるのだ。 合計8本の通信線があるのだ。 |
行きと帰りの通信線なら、素人考えだと2本で良さそうに思えるし 私自身、2003年くらいまでは、そう思っていた。 だが、そんな単純な話ではないのだ。
10Base-T/100Base-TXでは4本の通信線を使う
10Base-Tの場合を見てみる。
10Base-Tの伝送方式 |
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10Base-Tの場合、LANケーブルに8本の線があるうち 4本を通信に使い、残り4本は未使用になっている。 |
100Base-TXも同じだ。
100Base-TXの伝送方式 |
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10Base-TXの場合、LANケーブルに8本の線があるうち 4本を通信に使い、残り4本は未使用になっている。 |
10Base-Tと100Base-TXでは、8本のうち、4本使うのだ。 残り4本は未使用のままだ。
1000Base-Tでは8本の通信線を使う
2003年にLANで信号のやりとりする場合、LANケーブル内の8本の線のうち 4本しか使われていないと思い込んでいた。 だが、11年後の2014年にLANについて調べていると以下のサイトを発見した。 100Base-TX、1000Base-TX、1000Base-Tにおける伝送方式の違い 1000Base-Tでは8本使っている だった。 完全に浦島太郎になっていた。
1000Base-Tの伝送方式 |
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1000Base-Tでは、LANケーブルの信号線を8つ全て使う。 交互に通信を行なう事で、1本辺りの伝送速度を落としているのだ。 これによりLANケーブルの規格がCAT5eでも使えるのだ。 CAT(カテゴリー)についてはLANケーブルの規格 CAT(カテゴリー)で書いています。 |
ところで1000Base-TXは、あまり普及していないが、発見したサイトに 載っていたので、どういう物か載せてみた。
1000Base-TXの伝送方式 |
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1000Base-TXの場合も、LANケーブルに8本線があるうち 8本全て通信に使われる。 あとで後述しているが、LANケーブルでCAT6以降しか使えない。 1000Base-TはCAT5eから使えるので、1000Base-Tが普及したという。 |
10Base-T/100Base-TXでのストレートケーブルとクロスケーブルの違い
LANケーブルの中には8本の線があり、10Base-Tと100Base-TXでは 4本の線が通信線として使われている。 それを踏まえた上で、ストレートケーブルとクロスケーブルの違いを見てみる。 10Base-Tと100Base-TXで使われるストレートケーブルとクロスケーブルは共通だ。
ストレートタイプとクロスタイプの違い(10Base-T/100Base-TX用) | |
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ストレートタイプは中の配線が 文字通りまっすぐ(ストレート) |
クロスタイプは配線が中で 交差(クロス)している。 ただし交差しているのは4本だけだ |
これがストレートタイプとクロスタイプの違いだ。 通信線が4本なので、クロスケーブルでは、4本しか交差していないのだ。 ストレートタイプは、パソコンをハブを結ぶLANケーブルだ。 通信線同士の接続は以下のようになっている。
ストレートケーブルの通信線の状態(10Base-T/100Base-TX) |
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パソコン側の「1」と「2」で送信した信号は、ハブ側の「1」と「2」で受け取る。 ハブ側の「3」と「6」で送信した信号はは、パソコン側の「3」と「6」で受信する。 |
そしてパソコン同士を結ぶクロスケーブルの場合は以下のようになっている。
クロスケーブルの配線(10Base-T/100Base-TX) |
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パソコン側の「1」と「2」で送信した信号は、 ハブ側の「3」と「6」で受信する形になっている 反対にハブ側の「1」と「2」で送信した信号は パソコン側の「3」と「6」で受信する形になっている お互いがデータの送受信できるようにするため交差(クロス)した形になっているのだ。 |
10Base-T/100Base-TXでのストレートケーブルとクロスケーブルの違い
だが、1000Base-Tの時代になると、通信に使う線が4本から8本になる。 ストレートケーブルを使うのは何ら問題ないのだが、クロスケーブルの場合 交差が4本だけなので、具合が悪くなる。 そのため・・・ 1000Base-T仕様のクロスケーブルが登場 となるのだ。 もちろん、2014年になるまで、 そんな事は知らへんかった!! なのだ。まさに浦島太郎だ。 そもそも私自身、普段はクロスケーブルを使わない。 そのため旧仕様のクロスケーブルを使ってパソコン同士を接続したが 通信できない問題に直面しなかったのだ。 1000Base-Tのクロスケーブルの場合、線の交差が4本から8本になる。
ストレートタイプとクロスタイプの違い(1000Base-T仕様) | |
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ストレートタイプは中の配線が 文字通りまっすぐ(ストレート) |
クロスタイプは配線が中で 交差(クロス)している。 10Base-T/100Baset-TX用と違い 8本とも交差している。 |
注意 ところで1000Base-T仕様の場合だが、10Base-Tと100Base-Tでも使える。 上位互換なのだ。 なぜなら10Base-Tと100Base-TX用のクロスケーブルで交差している部分が 1000Base-T仕様とは共通しているからだ。 |
1000Base-Tが主流になった現在、クロスケーブル購入する場合は 1000Base-T仕様の購入 というのを忘れてはならないのだ。 LANケーブル内の線の交差などの規格について。 結線図(TSUKO 通信興業株式会社)
LANケーブルは複線で通信
10Base-Tと100Base-TXが通信する際に、4本の線を使っている。 1000Base-Tの場合、8本の線を使っている。 複線ではなく、複々線での通信だ。
複線ではなく複々線で通信を行なっている |
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全二重だと複線で十分のはずなのだが、複々線で通信を行なっている。 そのため、なぜ複々線なのかの疑問を持った。 |
複々線にしている理由は、ノイズ対策だった。
複々線にしている理由 |
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同じ信号を1本ではなく、2本使って送っている。 差動回路という仕組みで、2本使う事で、ノイズがのっても 差分処理する事で、ノイズが除去できるというのだ。 |
差動回路については、ここでは触れません。 詳しくは差動回路とノイズ対策をご覧ください。
LAN入門:目次 | |
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ストレートケーブルとクロスケーブル | LANケーブルのストレートタイプとクロスタイプの違いを書きました。 |
リピーターハブとスイッチングハブ |
リピーターハブとスイッチングハブの違いと、全二重通信と半二重通信の話です。 10Base-T以降では、パケット衝突は、実は擬似衝突などを書いています。 |
社内LANの調査 | 2005年に、ブラックボックス化した社内LANを解明した話です。 |
オートネゴーシエーション |
10Base-T、100Base-TX、1000Base-Tなどが混在する環境で どうやって通信制御を行っているのか その仕組みを書きました。 |
LANケーブルの規格 CAT(カテゴリー) | LANケーブルの規格のCAT(カテゴリー)の違いを書きました。 |
データ送信とデジタル信号の符号化 |
LANケーブルを信号が伝わる際、どうやってデータ送信をしているのか。 デジタル信号の周波数を抑えながら、高速で信号送信する技術を書きました。 10Base-T、100Base-TX、1000Base-Tについて書きました。 |
データリンク層 |
LAN内のパソコンや通信機器同士の通信はMACアドレスが使われています。 それを司るデータリンク層について書きました。 |
表皮効果と近接作用 |
LANケーブル内で起こっている信号減衰の原因が 表皮効果と近接作用である事と LANケーブルの撚り線が、ノイズ対策なのを書きました。 |
ツイストペアとノイズ対策 |
LANケーブルがツイストペア(撚り線)なのはノイズ対策のためです。 その話を書きました。 |
差動回路とノイズ対策 |
LANケーブルは8本あり、データ通信は複線で行っています。 差動回路を使ったノイズ対策の話を書きました。 |
同軸ケーブルの仕組み |
昔のLANに使われていた同軸ケーブル。 現在でもテレビのアンテナに接続する線として使われたりしています。 同軸ケーブルの仕組みや特性インピーダンスの話を軽く触れました。 |
発振回路 |
クロック信号を作る発振回路の説明です。 簡単なLC型コルピッツ発振回路を使って説明しました。 |