システム奮闘記:その84

中小企業でIT予算管理



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(2010年2月14日に掲載)

はじめに

 IT予算管理を全く知らない私。IT管理のド素人の私。
 もちろん、うちの会社は、今まで行なった人はいなかった。

 予算申請は、必要な時に申請するという形式だった。
 そこから、IT予算管理の方法を確立していく過程の話です。
 今回は、IT予算の分類と可視化、IT予算申請の話を書きました。

IT予算管理の話と出会う  2009年4月、IBMのユーザー会の勉強会が神戸のホテルで行なわれた。  この時、非会員でも無料で参加できるし、懇親会もある事から  タダ飯勉強会なのらー (^^)  で飛びついた私。有給とって参加する事にした。  勉強会で講習のあと、いくつかの組に分かれて討論になった。  そこでIT予算管理の話が出てきた。  その時の話で・・・  売上額の1%をIT予算限度額する!  があった。  売上額の1%をIT予算にする話は初耳だった。  そこで私は  1%はどこから来たのでしょうか?  と質問してみた。  討論の進行役の方は「経験則かもしれない」だった。  周囲も「なんでだろう」という感じだった。  どうやら経験則から来る目安のようだ。  そして、業種によってIT予算限度額の目安が異なる事も知った。  以下の感じだ。
業種別のIT予算限度額の目安
製造業 売上額の0.6%
金融業 売上額の5%
その他 売上額の1%

 私以外の周囲の方々は大手企業の方ばかりで
システム部員だけでなく、役員や管理職の方までおられたため、
討論で出てきたIT管理手法やIT担当者の評価法の話は

 私の知らへん事ばかりやん!!

 技術偏重に走っている事務員の私には知らない話題。
 でも、この程度で卑屈にならない私 (^^)

 だって、知らない事が出る事で・・・

 ネタができるもーん (^^)

 と喜ぶ私。
 「知らない事」を逆手にとれる私なのだ。

卑屈にならない、もう1つの理由(企業統治の違い)
大手に比べると中小の場合、社内の制度や規定が未整備だったりする。
でも、恥ずかしい事ではないのだ。
大手のように大人数で作業を行なう場合は、個々の作業の差異を防止し
効率的に仕事を行なう上で、作業手順の標準化が求められる。
企業活動において標準化や規則化が効率的なのだ。

しかし、中小の場合、担当者が1人だったりする。

下手に規定や制度を作ると、柔軟性に欠け、効率が下がる恐れがあるため
大手みたいな制度化や標準化する利点がないのだ。

企業統治のおいて、規模の違いによる統治法は異なる。
中小が大手の真似をして失敗する事例があるのは、そのためなのだ。

(注意)
誤解のないように書きますが、決して中小に規定や標準化が
不要という事ではありません。
下手に規定や標準化をすると効率低下を招くという意味です。

 その晩の懇親会で、食べるわ、飲むわで、しかも無料。
 こんな勉強会は、非常にありがたいと思った (^^)

IT予算管理のお勉強

 IBMの勉強会で、IT管理の話を全く知らない事を実感させられた私。  でも、この程度で落ち込む私ではない。毎度の事なので、めげる事なく 必要だと思えば勉強すれば良いのだ。  それに勉強した結果、将来、カリスマITコンサルになり ヒルズ族の仲間入りができたら  女子アナと鍋パーティーができるのらー (^^)  煩悩の塊の私。煩悩が私を突き動かす。  でも、どこから手をつけて良いのか、わからない。  そんな感じで、ズルズルと半年近くを過ごした。
転機が訪れる  運命は2009年9月に訪れた。  NECネクサソリューションズのセミナー  IT経営塾 短期集中コース  だった。 2回に分けたセミナーだった。早速、申し込んだ。  1回目は9月3日だった。  講師の先生からの講義と演習だった。  話の内容は、経営戦略の入門で、自社の存在理由、自社の目指す方向、 位置付けを認識して、現在の状況とを付き合わせ、そこから浮き上がってくる 自社の長所・問題点を拾い上げ、どうしていくのかを考える作業だった。  経営課題を円滑に抽出するための方法なのだ!  私の場合、末端のヒラリーマン。経営と言われてもピンと来ないため 所属している総務部に当てはめ、演習を行なった。  でも、こんな作業は初めてな上、頭を全力回転させたため・・・  メチャクチャ疲れた・・・ (--;;  だった。  セミナー終了後、講師の先生から「めげずに頑張ってください」と 励まされた。  もちろん、この程度でめげない私は、2回目もサボらずに受講。  2回目は、経営課題の中からIT関連やIT適用できる部分についての話だ。  ここでIT予算管理の話が出てきた。  そして、執行予算の分類から管理表の作成までの演習が行なわれた。  こんな作業は初めてなので、やはり・・・  メチャクチャ疲れた・・・ (--;;  だった。  でも、無料で、これだけの内容のセミナーが受講できるのは ありがたかった (^^)  このセミナーでも「IT予算限度額が売上の1%」という話が出てきた。  講師の先生に質問した。  IT予算に人件費は含まれるのですか?  先生は「企業によりけりですね」だった。  人件費をどう考えるのか。簡単なようで難しい。  詳細については後述しています。
IT予算管理表作成  セミナーで受講した内容を生かそうと思っていた。  すぐに生かせる場がやってきた。10月になって役員から社内に通達が来た。  来年度の予算の計上を行なうように!  今までは、その場、その場で申請していた予算だった。  しかし、上層部の方で、年間の予算の大枠を把握するため、 年度末までに、次年度の予算の大枠の予算申請の形になった。  今までの私なら・・・  めんどくせぇ事になった  とボヤくのだが、IT管理のセミナーを受講していたお陰で  セミナーで受講した話が実践的に使える!  だった。  そして、この原稿のネタにもなる (^^) まずは過去のIT予算の実態を浮き彫りにするため 執行済IT予算の金額の算出を行なう事にした。  2007年、2008年度のIT予算の執行内容を調べる事にした。  内容と金額の明細を作成していった。  完全ではないが、だいたいの金額が出てきた。  だが、単に購入明細だけでは、出費と投資効果が見えてこない。  そこで、セミナーで習ったIT予算(IT投資)の分類法が使う事にした。  次の分類があるというのだ。
IT投資の分類
戦略性投資 企業価値を高めるための投資。
企業価値を高め、売上・利益向上を目的とした投資。
事業継続投資 企業価値を維持するための投資。
企業価値の低下を防止して、事業継続するための投資。
業務効率化の投資とも言える。社内向けの投資とも言える。

 そして「事業継続投資」を2つに分類するというのだ。

事業継続投資の分類
利用部門 営業マン、事務職といった社内の利用者のための投資。
インフラ部門 通信やサーバーというインフラ関係の投資。
IT関係のインフラを維持するための投資だ。

 ここまでで、まとめてみると以下のようになる。

IT投資の分類
戦略性 企業価値を高めるための投資。

(具体例)
ネット販売導入で販路拡大。
営業支援システムによる効率的な営業活動。
事業継続 利用者 営業マン、事務員といった社内の利用者のための投資。

(具体例)
パソコンの買い替え。
業務関連のソフトの更新や新規購入。
インフラ 通信やサーバーというインフラ関係の投資。

(具体例)
サーバやサーバーの買い替え
通信回線の費用。保守契約費用。
各種システムの運営維持費。

 なんとなく見通しが良くなった感じがする。
 だが、もう1段階、分類を行なう必要がある。
 それは・・・

 新規投資か既存投資の区別なのだ!

投資の区分(3段階目)
新規投資 新規システム導入、パソコンの新規購入など
新規に購入するための投資。
既存投資 保守契約、メンテナンス費用など、そのシステムなどを
維持するために、毎年、払っている費用の事。

 3段階の投資種類の分類によって、より見通しが良い感じになる。
 そして投資の具体例をあげてみる。

IT投資の分類と具体例
戦略性 新規 ネット販売導入費用
営業支援システム導入費用
既存 営業支援システムの保守費用などの
戦略性投資で新規導入後の運用費用。

(注意)
これは事業継続投資ではないかという
突っ込みがあるかもしれません。
それに対しては後述しています。



利用者 新規 パソコンの買い替え。
業務関連のソフトの更新や新規購入。
既存 ソフトのバージョンアップの更新料。
インフラ 新規 サーバーやルーターの買い替え
既存 通信回線の費用。保守契約費用。
サーバー関係等の保守契約

 用途別の投資の分類ができた。

 新規と既存とわける事によって、より予算の性格がはっきりしてくる。

新規投資と既存投資の違い
新規投資 戦略性投資なら販路拡大、事業継続投資なら
業務効率化の促進の費用。つまり前向きの予算なのだ。

これが削られても、すぐに業務に支障が出るわけではないため
一時的な予算削減には使えるのだが、将来的な事を考えると
企業の成長が止まるため、それを考慮する必要は出てくる。
既存投資 維持費。
戦略性投資なら販路拡大を支えたり、事業継続投資なら
業務の維持が目的だ。

安易に削ると企業の弱体化につながるだけに
質を落とさずに削減する事が求められる予算だ。

 同じ投資でも、分類する事で性質の違いが鮮明になる。
 同時に、削って良い所、良くない所も見えてくる。

戦略性投資について

 分類していている最中、ある事に気がついた。  戦略性投資は私の価値向上につながるやん!  だった。  戦略性投資の金額が低い時は2つの見方ができる。
戦略性投資額が低い場合
(1) 営業支援システムのように外注費がかかる投資が
控えていたため、投資金額が低く抑えられている。
(2) 企業価値を高めるシステムは導入したのだが
上手に無償のオ−プンソースを活用して自力導入のため
外注費を抑えられ、金額が低くなっている。

 もし、投資金額が低く抑えられた上で、企業価値を
高める事ができれば・・・

 私の功績になるのだ!! (^^)

 もちろん、オ−プンソースで自力で導入した場合と
外注した場合の費用の比較を行なう必要がある。
 その方が、より自分の評価を上げるための効果的だからだ。


 ところで戦略性投資にも新規と既存の分類ができる。

IT投資の分類と具体例
戦略性 新規 ネット販売導入費用
営業支援システム導入費用
既存 営業支援システムの保守費用などの
戦略性投資で新規導入後の運用費用。

 ここで

 既存投資は事業継続投資ではないか!

 と思われる方もおられます。
 確かに、企業価値を高めた後の投資なので、事業継続投資と
考えても不思議ではない。

 この疑問だが、私の場合は、疑問に思う前に
NECネクサソリューションのセミナーで講師の先生が教えてくださった。

 数年間は戦略性投資で、その後は事業継続投資

 というのだ。

 つまり以下の事なのだ。

システム導入年数と浸透度
年数と浸透度のグラフ
導入当初は顧客や市場に対してのシステム導入の浸透度が低いため
浸透していく過程では、販路拡大や市場拡大という意味で
この期間の運用費用は戦略性投資の既存という分類ができる。

しかし、ある一定の浸透が進むと、それ以上の市場拡大が望めない上
顧客や市場にとっても既に既存のシステムと思うようになるため
事業継続投資に移行する形になる。

 もちろん、どの辺りから事業継続投資に移行するのかは
導入したシステムの性質や、システムの浸透度合にもよるため
一概に2年とか3年とは言えない。

 ただ、言える事は・・・

 陳腐化は早い!

 なのだ。

 新商品が出ても、数年後には新商品でなくなるのと同様に
企業価値を高めるために導入した新システムも、
数年後には業務維持のための既存のシステムになってしまう。

 当たり前の話なのだが、なかなか気づかない事なのだ。

新しくないが「幹線」
1964年に夢の超特急として新幹線が開通した。
新しい「幹線」として「幹線」の名称がつけられた。

だが開通から40年以上経過しているため、既存の鉄道になっている。
「新幹線」の名称は、既に固有名詞なので、見過ごしがちだが
名前の由来を考えると、「新幹線」という名称を使いつづけるのは
奇妙な感じがする。

事業継続投資

 事業継続投資を見ていく事にした。
事業継続投資



利用者 新規 パソコンの買い替え。
業務関連のソフトの更新や新規購入。
既存 ソフトのバージョンアップの更新料。
インフラ 新規 サーバーやルーターの買い替え
既存 通信回線の費用。保守契約費用。
サーバー関係等の保守契約

 投資の内容を見て、気がついた。
 この投資は・・・

 削減するのが難しい!

 社内のIT基盤の維持のためには費用がかかる。
 そして、老朽化をすると買い替えの必要が出てくる。

 IT化が進み、どんどんIT機材が増えていくと・・・

 維持・管理費の負担が重くなるのらー!

 当たり前の話なのだが、論より証拠で金額が浮き彫りになって・・・

 こんなに維持費がかかっていたのか!

 と初めて気づいた。

 上司に報告すると、上司も驚いた様子だった。
 今まで、こんな事をしていなかっただけに、実態を掴む事で
色々な事が見えてくる。

 まるでローマ帝国が滅んだ理由を連想してしまいそうだ。

社会基盤の老朽化がローマ帝国を滅ぼした
イタリアのローマには、古代ローマ時代の遺跡がある。
当時、ローマ帝国には格闘技場や水道などもあった。
社会基盤の整備や拡充を行なう事で、利便性を高めていった。
だが、ある時期を境に、社会基盤の老朽化が目立つようになり
社会基盤の保守や労力に費用がかかるようになっていった。
それが重くのしかかるようになり、ローマ帝国の
財政を逼迫し、ローマ帝国の滅亡への原因につながった。

 現状のシステム維持や企業価値維持のために必要なだけに

 肥大化すると厄介な投資!

 になる。

 戦略性投資の場合、企業価値を上げるのが目的なため
景気が悪くて売上が落ち込んだ際に、削減しやすい投資だ。
 例え、削減しても事業継続が可能なため、投資の先送りがしやすい。

 だが、事業継続投資の場合、削減すると、社内システムの維持が
困難になり、業務が非効率になったりする。
 業務を遂行するためには必要不可欠な投資になっているため

 削減の努力は必要な投資だが

 安易に削減できない投資!

 になってしまっている。


 システムの肥大化を防ぐためには、定期的に業務やシステムを見直し
できる限りの簡素化を行なう事で、システムの贅肉を落として
システムの維持費を軽減する事を考えねばならないと思った。


人件費の扱い

 2007年度、2008年度の執行済予算の算出を行う際 人件費をどうするかが問題になるのだが、うちの会社の場合は  人件費を含めない!  という事にした。  IT部門の人件費を含めるのが、システム運用の費用を 正確に見るには適切かもしれない。  しかし、中小企業の場合、次の問題が起こる。  IT担当者は兼任なのだ!!  私の場合は総務部員。総務の仕事と兼任してIT担当だ。  他の中小企業でも、経理や営業と兼任している場合が多く 専任のIT担当者を置ける所は、ほとんどないだろう。  すると人件費の算出が厄介になってくる。
専任のIT担当者の場合の人件費
専任IT担当者の場合の人件費
専任の場合、勤務時間の全てをIT関係に投じる事ができるため
人件費をIT予算として計上するのが容易だ。

 だが、私のような総務と兼任の場合は、ITに投じた時間を割り出し
人件費の中からIT分だけを割り出す必要がある。

兼任のIT担当者の場合
兼任IT担当者の場合の人件費
私のように兼任IT担当者の場合、総務の仕事といった
他の業務を行なっているため、全ての勤務時間を
ITに投じているわけではない。
業務時間別の割合を割り出し、ITの業務時間分の
人件費を算出する必要が出てくる。

 いちいちITに投じた時間を書き留めている事はしていない。
 総務の仕事の合間にIT関係の処理を行なったり、反対に
IT関係の仕事をしている間に、総務の仕事が割り込んできて
総務の仕事の処理をしたりする事なんて日常茶飯事。

 なので、正直な事を書くと・・・

 ITの時間なんて割り出せないもーん (^^;;

 そのためIT部分の投じた時間から、IT分の人件費を
割り出す事は非常に困難なのだ。

本来なら人件費の割り出しが望ましいが
工業製品の原価を求める際、人件費を原価に盛り込むため
作業内容別の時間を割り出し、以下の図ように
直接労務費と間接労務費を割り出している。(工業簿記)
工業簿記:人件費について
直接労務費は、直接、その製品の生産に携わった作業分の賃金だ。
間接労務費は、例えば、複数の製品で使う塗料の生成などに
携わった場合、用途や従事時間の配分などから、
その製品分の割合を出し、その金額を算出するのだ。

労務費を算出する事で、単に生産物の原価を求めるだけでなく
ある時期において労務費が上がっている場合
何が原因で労務費が上がっているのかの検証が行なえる。
いわば、異常値発見のための指標の1つになるのだ。

その点では、社内システムの運用などにおいて
人件費の算出の利点は、単純にシステム運用費用の把握や
人件費の度合から、労力の掛け具合を知る指標にする事ができる。

 手間がかかる上、ITに投じた時間の割合の算出が困難な事から
うちの会社の場合は、人件費をIT予算に含めない事にした。

電気代、その他、諸経費などについて

 事業継続投資の費用として、サーバーやパソコンなどの 電気代もバカにはならないと考えられる。  だが、大手と違い、パソコンの台数が少ない上、サーバー室や サーバー用の空調設備といった大層な物なんぞあるわけがない。  でも、サーバー1台あたり年間数万円の電気代はかかりそうだ。  そこでパソコンやモニターの裏に表記されている電力消費の ワット数を調べ、だいたい7掛けの値を使ってみる。  そしてパソコンやモニターの稼働時間を1日8時間と仮定して 消費電力の概算を求めるのは可能なのだ。  そして算出した結果・・・  年間、何十万円になったのらー!!  さすがに100万円の大台は越えなかったものの、電気代は 中小企業であっても、経費として考える意味では、バカにできない数字だ。  電気代は、目に見えない事業継続投資の中の既存投資になる。  盲点となりやすいのだ。  電気代の概算の算出法は以下の通りです。
電気代の概算の算出法
当たらずとも遠からずの値が出てくるだろう。
こんな感じで、モニター、ルーターなどの電気代も算出。

サーバーやルーターの場合は、8時間ではなく24時間稼働のため
1日辺り24時間稼働で計算すれば良い。

 上の式で算出される電気代の値は、おおよその数値なのだが
システムの運用費用の実態を明らかにするのが目的なので
目安の値で十分なのだ (^^)


 その他、諸経費はどうするか。
 システム関係で営業所へ出張した出張旅費は事業継続投資の既存に入れた。
 営業所で使っているプリンターのインク代は、営業所で購入している上
本社では把握しきれないため、盛り込まない事にした。

 厳密な値ではなく、目安が必要なので、少額で手間がかかる事については
省く事にした。

予算管理表の提出

 2007年度、2008年度の執行済予算を、できる範囲で調べ上げ 予算管理表を作成した。
予算管理表
黒塗りの部分を知りたい方、私にワイロを送っても
企業秘密までは教えられません (^^)

IT予算限度額は売上金額の1%にした。
といっても、この数値も企業秘密です (^^)

 投資項目別の分類と数値化する事で、投資の内容が把握しやすい上
問題点を浮き彫りにしやすい。

 もちろん、投資内容の明細があれば、よりわかりやすいため
投資内容の明細も作成した。


 そして役員に提出した。
 すると役員が・・・

 うちみたいな中小企業の場合は

 売上額ではなく償却前利益の方がエエで

 だった。
 この時、償却前利益という指標を初めて知った。

償却前利益とは

 どこで償却前利益について調べてみる事にした。  書店で会計関係の本を見てみるが、意外と載っていない。  単に私の見つけ方が悪いかも (^^;;  そこでネット検索の力を借りる。  YAOO知恵袋に投稿されていた内容がわかりやすかった。  キャッシュフロー=償却前利益(当期利益+減価償却費)という考え方は、正しいですか?  どういう事かと説明するのだが、簿記を知らない方のためにも、 まずは粗利について簡単に説明。
粗利とは
粗利とは
売上のうち、売上原価(仕入金額)を差し引いた物を粗利という。
100円で買った物を200円で売れば、100円の儲けというのと同じだ。

 ただ、企業経営を行なう上で、粗利だけで「儲けた」では気が早い。
 なぜなら、企業活動の中で必要な支出(経費)が出てくるからだ。

 そこで粗利から経費を引いた物を営業利益という。

営業利益とは
営業利益とは
粗利から経費を引いた物の事だ。

単純な例で見ると、1000円で買った物を電車に乗って友人の家に行き
友人に2000円で売った場合、2000-1000=1000円の儲けとはならない。
粗利1000円から往復の電車賃(経費)を引いた金額が実際の儲けになる。
もし、往復の電車賃が1200円なら、200円の損になるのだ。

 単純な取引なら、こんな感じなのだが、企業会計で面倒(?)なのが
経費の中に含まれている減価償却費なのだ。
 非現金出費型の支出なのだ。

経理の内訳
経費の内訳。減価償却とその他
経費の中には減価償却費と呼ばれる非現金出費の支出が含まれている。

高額機器の購入の際、大抵の場合、何年にも渡って使う。
そのため購入時に、いきなり購入代金全額出費という形にならず、
摩耗分を出費と考え、何年かに渡って分割して出費という形をとる。
その出費を減価償却費と呼ぶ。

減価償却費の別の見方では、高額機器が何年にも渡って利益を生む。
そのため、機械の利用料みたいな発想で、何年にも渡って分割して
出費するという形にもなる。

ある年数とは法律で決まっていて、それを「法定耐用年数」と言う。

減価償却の話については、詳しくは「システム奮闘記:その33」の
経理を知らなかった私をご覧ください。

 減価償却の話を知らない方には、いまいちピンと来ない話だが
現金の動きがない出費なのだ。

 問題になっている償却前利益なのだが、以下の事なのだ。

償却前利益とは
償却前利益とは
営業利益と減価償却費を足し合わせた物が「償却前利益」なのだ。

営業で稼いだお金と、現金出費が伴わない支出分を足した物で
その期間、実際に稼いだお金の目安になる。

日常生活で例えると、給料の範囲内で使えるお金と同じ意味だ。

実際には、営業外利益、営業外損失、支払い利息、受け取り利息
税金といった出費があるのだが、本業で稼いで手にした現金の目安には
償却前利益の値は使える。

 売上金額でIT投資金額の目安を出すのは、資金力のある大手だと可能だ。
 10億、20億の赤字でも、資金力があるから投資を行なえるからだ。

 だが、中小企業で考える場合、資金力がないため、赤字を出してまで
投資をできるかといえば、そんな事はない。
 そのため自分の稼ぎの範囲に基づいての投資、即ち・・・

 分相応の出費

 という事で、償却前利益を使った指標を使うのが適切だというのだ。

 それに、赤字を出しながらの大きな投資を中小企業が行なうと

 銀行からイチャモンが来る!!

 のだ。

 中小企業の関係者の話を聞いていると、意欲的な事をしたくても
銀行から外圧がかかる。揺さぶりをかけたりする。

 ある中小企業の経営者の実話。
 不況時には優秀な人が採用しやすいため、採用枠を広げるだけでも
銀行から

 お前、勝手な事するな!

 と脅しがあったという。

 右から左へ金を動かしているだけの商売で、横柄な態度をとり
世の中の縁の下の力持ちで日本を支えている中小企業に対して
極道商売をしているのが銀行なのだ。


 ところで償却前利益は、分相応の出費の目安以外にも使われる。
 以下のサイトで、企業の収益度合を各国の税制や会計基準の要素に
左右されにくい形で見るための指標だという。

 野村証券の償却前利益の解説

 企業投資を考える際、収益度合は重要になってくる。
 しかし、国によって税制や会計基準が異なるため、同じ収益力であっても
最終利益(税引き後利益)の値が大きく変わってくる。
 そのため、税制、会計、金利といった要因を取り除いて見ていかないと、
本当の意味での企業の収益力が見えてこない。
 そこで、できる限り、外的要因を取り除いた指標として
償却前利益が使われているのだ。

 うーん、今まで知らへんかった (^^;;

 まぁ、株や投資信託といった投資はした事がないし、そんなお金もない。
 なので、償却前利益とは無縁だったのだ (^^)

償却前利益でIT投資の限度額の指標作成の壁

 だが、償却前利益をIT投資の限度額にする際、大きな壁があった。  私はペーペーのヒラ社員。ただの末端のヒラリーマン。  内部でも非公開の情報なので  損益計算書の閲覧ができないのらー (^^;;  そう、償却前利益を見るには損益計算書が必要なのだが 私には閲覧する権限がない。  そのため償却前利益を使った指標の作成は、入口の段階で頓挫してしまった。

2010年度の予算申請

 2010年度の予算申請を行なう事になった。  早速、予算申請の明細を各投資別への分類を行なう事にした。 戦略性投資  特に案件も出ていない。  それに、いくら私がIT戦略の立案や推進ができる能力があっても  ヒラリーマンには権限も何もなさすぎるのらー (^^;;  役員や部長級の人なら、会社組織を動かしてIT化推進ができるが ヒラリーマンだと、会社を動かしていくのは、相当な労力と時間がかかる。  中長期的なIT戦略がない事から、経営陣からの提案がない限り 簡単な部分でしか予算申請が思いつかない。  IT戦略については、いずれは取り組んでみたいと思っていますし それをネタに、システム奮闘記にも書きたいと思っています (^^) 事業継続性投資  保守契約、通信費用、インク等の消耗品は2007年度、2008年度の 執行済の予算と同じと考えられる。  だが、事業継続投資の場合、老朽化したパソコン等が故障した際の 買い替えの費用を考えなければならない。  その予算をIT予算計上に盛り込む必要がある。  だが、いつ何が故障するのを予言するのは  占い師じゃないので、わかりませーん (^^)  なのだ。  昨日まで問題なく動いていた装置が、いきなり故障する事だってある。  だが、確率的に故障しやすい物を取り上げる事は可能なのだ。  装置が故障する確率だが、装置の種類によっても異なる上 同じ装置でも、故障までの期間には差異がある。  そこで思いついた!  法定耐用年数で算出しよう!
法定耐用年数(2010年1月現在)
品名 年数
パソコン 4年
サーバー 5年
デジタル交換設備 6年
放送設備 6年
テレビ会議設備 10年
その他通信機器 10年
複写機・プリンター 5年
(注意)

税法はコロコロ変わりますので、あくまでも2010年1月に調べた物です。

(パソコンとサーバーについて)

パソコンは4年、サーバーは5年です。
市販のパソコンをサーバー利用した場合は、どうなるのか?
おそらく用途で決まると思いますが、私は断言する自信はありません。
困った時は税理士さんと相談をお薦めします。

(ルーターについて)

ルーターの場合、デジタル交換機に該当するのか
それとも、その他通信機器に該当するのか、
色々、調べてみるとルーターの法定耐用年数は10年でした。

 10年以上ルーターは使うのかどうか疑問になってくる。

 こんな目安となる故障確率表を考えていた。

装置の故障確率(目安)
使用期間 故障確率
法定耐用年数以内 0%
法定耐用年数×2の期間以内 50%
法定耐用年数×2を超えた期間 100%

 装置の故障確率を法定耐用年数で考えてしまうと

 ルーターは10年間は故障しない!!

 という前提になってしまう。
 仮に10年故障しても、ルーターは10年使い続ける機器とは思えない。

 法定耐用年数が、実際の使用期間との間で乖離が生じているのは
よく知られた話だが、ここまで乖離があっては、故障確率表の作成の
目安にならない。

 そこで次の事を考えた。

 メーカー保証期間で考えよう!

 といっても機種によってメーカー保証期間が異なる。
 こんな時は、人間の感覚(勝手な主観)で考える。

 メーカー保証は平均3年と考えよう!!

 という事で、以下の故障確率の目安を作成した。

装置の故障確率(目安)
使用期間 故障確率
3年以内 0%
3〜6年 50%
6年以上 100%

 これだと比較的使えそうな気がした。
 これで故障するIT機器の台数を算出するのは以下の方法を使う。

 使用期間が3年以内のルーターが4台あると

 4×0(%)=0台

 使用期間が3〜6年以内のパソコンが7台あると

 7×50(%)=3.5台

 端数が出ても気にしない。
 あくまでも故障する可能性のある台数を算出するのだから。

 そして6年以上使っているモニターが3台だと

 3×100(%)=3台


 大雑把な計算方法なのだが、目安には使えると思う。

 故障が想定されるパソコン、ルーターなどを拾い上げていく。
 3年以上使っている機材が結構ある。

 どんどん不良資産になりそうな機器が出てくる。


 そしてパソコン、プリンタなどの買い替えのための購入金額の目安を
だいたいの金額で考える。

機器購入のための費用(目安)
機器名 金額(目安)
パソコン
(モニター込)
70,000円
液晶モニター 25,000円
プリンター 20,000円

 故障が想定できる機器の台数と、1台あたりの金額を掛け合わせると
来年度、故障した機器の買い替えにかかる費用(目安)が算出できる。

 もちろん、不良資産化する機器の交換のための費用を
多めに見積ることで、予算の備えができる。

 例え、ITが金食い虫と言われても、実態を明らかにする事が
何事においても出発点なのだ。なので・・・

 フフフ、どんどん洗い出すで〜!!

 というわけで、不良資産化しそうなIT機器を、
できる限り洗い出す事にした。

 どんどん不良資産化しそうな機器が出てくる。
 なにせ事務用パソコンでWindows98が現役で稼働していたりする。
 プリンターも数年前の家庭用の物を使っている。

 ルーターも本社と営業所分で14台使っている。
 インターネットVPNの導入の際に購入して5年になる。
 インターネットVPNについては「システム奮闘記:その35」をご覧ください。

機器の一式交換の考え方について
例え、パソコンの場合、故障といってもハードディスクが原因の場合は
ハードディスクの交換だけで良いので、一式買い替える必要はない。
だが、会計の保守性の原則の「将来の支出は計上する」があるため
多めに見積る事で、最悪な事態に備える事ができる。

 そして出てきた金額が数百万円になったので上司が

 えらい金額やな・・・

 と驚いた様子だった。
 上司にとっても予想外の金額になった。


 このご時世、予算削減が求められる。
 そのため経費削減ができれば自分の評価が上がるし
経費削減ができない場合は、評価が上がらない。
 そのため、予想外の金額は、金食い虫の印象を与えてしまうだけに

 不都合な真実!

 になってしまうのだが、そんな事は気にしない。

 過去に何度もITに関してパンドラの箱を開けまくっただけに
この程度の事ではビクともしない私なのだ (^^)

 それに、あくまでも故障想定のための買い替え金額の目安であって
実際に、この予算を使い切るという性質の物ではないのだ。


 買い替えのための予算。事業継続投資なのだ。
 2007年、2008年執行済の予算表の明細には「新規」という扱いにした。
 でも、よく考えると「新規」というわけでもない。


 そこで思いついた!!

 買い替えは「不良資産処理」

 という分類にしてしまえ!

 これで事業継続投資は3つの分類になった。

 新規・既存・不良資産処理

 分類というのは、問題点を浮き彫りにするための手法なのだ。
 そのため故障が想定される機器と交換に必要な予算を
浮き彫りにする目的にするためには、追加した方がわかりやすいのだ。

 講習で習った「新規」と「既存」だけにこだわる必要はない。
 必要であれば、項目を設けて、個々の場合に合わせて
見やすい形に分類できれば良いのだからだ。

事業継続投資を3つに分類する
新規投資 新規購入
事務作業の効率化などでパソコンや周辺機器の新規購入など。
既存投資 主に維持費
保守契約、メンテナンス費用など、そのシステムなどを
維持するために、毎年、払っている費用。
不良資産
処理
故障や老朽化のための買い替え費用。
不良資産化した物を処分して、買い替えるのだから
まさに「不良資産処理」がピッタシの名称かも (^^)

 細かすぎる分類だと見ると、見にくくなるだけでなく
分類の基準に厳密性を持ち出すと分類が困難になり大変なのだが、
適度な分類を行なうのは、見通しが良くなり、わかりやすくなる。


 うちのように、パソコンやIT機器の買い取りをしている企業の場合、
「不良資産処理」の項目を設けると、わかりやすい。
 リースを活用している所だと、リース料を払うだけで良いので
「既存投資」という項目に入れる事ができる。

リースについて
IT機器の故障やIT機器管理の手間を省くための手段として
リースと保険の組み合わせという方法がある。

もし、IT機器をリースを使えば、リース料は事業継続投資の
「既存」に含めて考えて良いので、わざわざ不良資産処理の
項目を設けなくても良くなる。

大手の場合、管理台数が多い事もあり、資産管理の手間を省くため
リースを採用する所が多い。
その上、リース期間は法定耐用年数の70〜120%に設定可能なので
特に陳腐化の激しいIT機器の場合、短い周期での機器交換には
リースが向いているという利点も挙げられる。

そして中小の場合、リース物件は高額商品の場合がよくある。
(ローンと同じ感覚で、一種の融資だ)
しかし、そうでない場合、購入代金よりもリース料が高くなる上、
資産管理の手間も少ないので大手ほどリースの恩恵がない。
10万円未満のパソコンやIT機器は消耗品費扱いで資産計上不要なので
資産管理の手間を考えなくても良いのもあるが。

 リースが良いか、買い取りが良いか。
 購入する製品、台数など、色々な要素があるため
一概にどっちが良いかは決められないだけに
個々の場合に応じて使い分けというのが良いのだ。


来年度の予算案を提出  完全にIT予算のとりまとめを行なう私。  なので、私の肩書は・・・  取締まられ役・平社員(CIO代行)なのらー (^^)  運転代行ならぬCIO代行。  といっても権限も何もないのだが、故障想定機器の計算法や 電気代の算出法などを基準を独断で決めていく。  そして故障される機器の調査や問題点が見付かるごとに どんどん盛り込んでいくため  どんどん膨らむ予算案なのだー (^^)  上司が「えらい膨らんだなぁ」と言った。  だが、会計の保守性「発生し得る支出は計上」なので、 考えられる費用は予算案に盛り込む事にした。  そして来年度のIT予算案を作成。  そして部長にIT予算案を提出した。  人件費こそ含めていないが、予想電気代、故障想定交換費用を盛り込んだ。  保守契約や通信費用といった見えているシステム運用費用だけでなく 見えない運用費用まで盛り込んだ物だ。  完璧とは言えないが、単なる表に見える分の予算申請だけでなく、 表には見えない分を含めた、年間の運用費用を見える化する意味合いもある。  まさに・・・  IT投資の可視化なのだ!  そして認められた分に関して、実際に効果があるかどうかの 検証を行なっていくのだが、それは今後の作業になってくる。
申請予算の採用・不採用の基準について  申請した予算に対しての採用・不採用の決定基準の作成。  今回は、私は判定される側なのだが、判定する側の基準を作るのは大事になる。  なぜなら・・・  声のデカい人の押し付け防止のため!  どこの会社でも多かれ少なかれある事だが、声のデカい人が その人の主観で「これは良いから導入」という場合がある。  しかし、企業としての基本を忘れてはいけない。  費用対効果はどんだけあんねん?  なのだ。  声のデカい人の自己満足のために、効果が見込めない投資を行なうのは 企業活動の妨げになる。  そのため  関所を設ける必要が出てくる!  誰が見ても納得できる基準作りは難しいのだが、それなりの基準があれば ある程度の公平さは保てるし、納得もできるだろう。  NECネクサソリューションズのセミナーでも取り上げられたのだが さすがに、そこまで手が回らなかった。  この辺の基準作りは、今後の課題になっていくだけに いずれは取り上げたいと思います。
執行済予算の投資効果と、その評価について  システムに投資したのが、どれくらい効果があるのかを検証する必要もある。  投資したままで終わったのでは・・・  ホンマに効果があったのか、わからへん!  実際に、投資効果があったのかを検証する必要がある。  投資には即効性のある物だけでなく、遅効性の物もあるし 発想自体は良くても手法が悪くて、思うように効果が得られない場合もある。  例え、失敗の投資であっても、なぜ失敗だったのかを踏み込んで 調べないと、同じ轍を踏む事になりかねない。  そこで重要になるのは、PDCAサイクルと呼ばれる物だ。
PDCAサイクル
PDCAサイクルの図

 ただ、ここで投資効果を評価する物差しの問題が出てくる。
 これに関しては、今回は確立できなかったので、
いずれは取り組む必要のある課題だと思う。


最後に  今回は、IT予算の投資別分類を中心に、システム維持費や 故障想定機器の交換費用の算出の話になりました。  IT予算の実態を「見える化」する事は、金食い虫という印象を 上層部にもたれる危険がある一方で、ITに必要な経費を見える化して IT投資の効果の検証や、IT化せずに人力で行なった時の人件費との比較 オ−プンソースの活用により削減した予算を金額化、及び、 機会損失を防いだ事をIT担当者が自ら示したりして、 IT担当者が地位向上にもつなげられる可能性もあります。  数字は見方次第で、色々な事に使えます。  IT予算管理は、これだけでは終わりません。  IT投資の効果に対する評価、予算申請の際の審査基準など まだまだ手つかずの部分があります。  取り締まられ役・平社員(CIO代行)の私なのだが  ヒラリーマンでもやりまっせ!  という具合に、今後の課題として取り組んでいく予定です (^^)

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