システム奮闘記:その30

みんなのカレンダー。Web予定表



(2004年4月25日に掲載)
はじめに

  グループウェア。企業内での情報共有の道具として使われるのだが、
以前、うちの会社で導入したが全く定着しなかった。
  詳しくは「システム奮闘記:その5」をご覧ください。
 (中小企業でグループウェア導入に挑戦)

 この時は失敗に終わったが、今回は成功例を紹介する事にしました。

各人の予定表があれば便利

2003年の暮れ、総務部長(私の所属している部署の責任者)から 次の依頼があった。
部長からの依頼内容
誰が銀行へ行くとか、郵便局へ行くとか把握できてへんから、
俺が銀行へ行った後に、A君が郵便局へ行くなど無駄が出ているし
誰が何日に、どの事務処理を行なうのか、わからへんから
急に、その日に担当が休むと代わりに作業する事ができへん。

メールでの連絡だと、ゴチャゴチャしてわからんようになるから
何か予定表みたいな物は、できへんかなぁ

  確かに、誰が何を行なっているのか把握できていない事が結構ある。
中小企業の社員は「なんでも屋」のだが、仕事内容によっては、担当者以外、
進捗状況を把握していない場合や、その人にしかできない仕事も結構ある。

中小企業における人の問題
中小企業では基本的に「なんでも屋」でないと通用しない。
しかし、人間なので、能力的に、全ての職種が行なえるわけではない。
大企業の場合、同じような仕事を複数人で処理している場合が多い。
そのため、1人が休んでも、他の人が代わりに処理する事が可能だ。

しかし、中小企業の場合、いくら守備範囲が広くても、人数自体が少ないため
複数人で担当できる仕事の範囲は限られてくる。
そのため「その人」しか処理できない仕事が必然的に出てくる。
IT担当者の場合、よく言われる話なのだが、経理でも労務でも
同じ事が言える。中小企業が抱える宿命なのだ。

仮に、担当者が長期入院すると、誰も代わりに処理する事ができず
仕事が滞る事態に陥る場合も考えられる。

  さて、メールでの通達。
  うちの会社では、通達や連絡事項は、全てメールになっている。
  特に、規則化されているわけではないが、手軽な事もあって、
いつのまにか、メールで通達や連絡事項が流れるのが当たり前になっていった。

  上手に整理していかないと、ゴチャゴチャして、わからなくなる上、
あまりにも通達や連絡事項が多いと、どんな内容のメールが流れていたか、
忘れる事も出てくる。

  そのため、部長が日付を指定すれば、すぐに、その日の予定がわかる
掲示板的なシステムを作って欲しいと依頼してきた。

メールでの通達や連絡する場合の問題点
  「システム奮闘記:その5」(中小企業でグループウェア導入に挑戦)
でも触れましたが、2000年の夏頃、情報共有という事で、サイボーズの
グループウェアのお試し版を導入した所、ほとんど活用する人がいなかった。
  予定表を掲示板で書き込むよりも、メールで流す方が手軽だというのもあって、
掲示板は使われる事はなかった。

  しかし、その当時は、通達文は回覧で流れていた上、他の連絡事項なども
書面で回覧される場合が多かった。

  だが、年数が経つにつれ、書面で回覧されていた通達文や連絡事項が、
どんどんメールに切り替わっていったため、メールの流量が増えていった。
  流量が増えると整理する必要が出てくる上、もう一度、連絡事項のメールを見る時、
探すのも手間になっていた。

  メールが通達や連絡事項を伝える道具として力を発揮するのは、
流量が少ない時期であって、増加すると、受け手にとっては手間のかかる物になる。

  また、メールでの通達や連絡事項の場合、訂正や修正する場合、
再送信する必要がある。数回、訂正や修正を流す人もいるため、
どれが正しいものか確認して整理する手間も出てくる (--;;

  部長の依頼がきた時、私は・・・

 あのカレンダーを応用できへんかなぁ

 と思った。
  あのカレンダーとは「システム奮闘記:その29」
(ネット販売システム大改装)で出てきたカレンダーソフトだ。
 PHPLIBのセッション管理を応用した

 pgCalendar

 なのだ。

  pgCalendarのホームページは現在閉鎖されています。(2009/7/13)

 早速、改造を行うためにソースを読んでいく事にした。
 ユーザー認証機能はいらないと考え、PHPLIBの認証機能を外した。

認証機能を付ける場合(初期設定)
page_open(array("sess"=>"Cal_Session",
                "auth"=>"Cal_Challenge_Auth",
		"perm"=>"Cal_Perm"));
認証機能を外した場合
page_open(array("sess"=>"Cal_Session"));

  これで終わりかと思うと・・・

 なんで、エラーが出るねん (TT) 

  だった。
 理由は認証機能を付けていたため、各画面を開こうとするとソース内に
ログイン中のユーザーODを取得しとうとする記述があったからだ。

悪さをしていた部分

auth->auth["uid"]

 なので上の記述を、しらみ潰しに取り除くことになった。
 そして勢い良く・・・

 ウラウラウラ!!!

  と叫ぶようにして、キーボード乱れ打ちの如く、ソースを書き換えていった。
  乱れ打ちだったため、どこを書き換えたのか、覚えていない (・・)

こういう失敗談もあります
どこを書き換えたのか、覚えていない理由ですが、
当初、ある程度、ソースさえ解読できれば、簡単に書き換え作業が
終わる物だと思い、全く記録を残していなかった。
しかし、実際の所、かなり手こずってしまった。なんとか終わった後、
そういえば、どこをどう改造したのか、覚えてないなぁになってしまった (^^;;
闘記が詳しく書けるのは、実は、記録のお陰です。当時のメモを見ながら
当時の様子などを思い出しながら書いている。記録がないと記憶が呼び戻せない (--;;

  そして、その日の晩に完成した。そして、部長に報告した。
  部長は

 これは使える!

 という事で、早速、総務部全員に予定表を使うようにメールで指示が流れた。

スケジュール管理表の利用の様子

さて、利用結果を書く前に、一体、どんなシステムかを紹介します。 下のようなカレンダーになっています。
運用中の状態の画面
Webカレンダーの運用中の画面
日付のマスの中にある「入力」を選択すると
各人の予定を記入する入力画面が出てくる。
「予定一覧」を選択すると、その日の予定一覧が出てくる

  さて、各人の予定の入力をする場合、該当日付のマスの中の「入力」の所を
選択すると、次のような入力画面が出てくる。

入力画面
予定内容の入力画面
この画面で、名前と、その日の予定を入力するようになっている。

  あとは「保存」を押すだけで、内容が保存され、いつでも閲覧できる。

  さて、書き込んだ内容の閲覧方法ですが、例えば、1月10日の予定一覧を
選択すると、次のような画面が出てくる。

1月10日の予定一覧
1月10日の予定一覧の画面


  書き込んだ内容は、手軽に変更・削除できるようにした。
メールの連絡のように再送信して、どれが正しい内容なのか混乱する事もなくなる。

  ちなみに、このシステムが完成した翌日が、えべっさんの「本えびす」だったので、
商売繁盛の縁起担ぎで、上の書き込みをしました (^^)
  西宮神社は、えびす総本山です。
  あと、西宮神社の周辺は、灘の酒と言われる「灘五郷」と呼ばれる地域で
近くには白鹿、大関、日本盛など、有名な酒造メーカがあります。



  さて、この予定表だが、使い勝手が簡単な上、わかりやすいので、
総務部の人は使うようになった。
  朝、出勤したら、まず、この予定表を見るのが習慣となっていった。

  当初、私のいる総務部だけで使っていたのだが、この予定表を見た他の部署から
「これは便利だから、使わしてくれ」という申し出がきた。
  別に、拒む理由もないため、本社の人間全員で使いましょうとなった。

  カレンダー形式で、わかりやすくて、使い勝手も簡単。
  簡単に、各人の予定や行動が書き込めたり、閲覧する事ができるため、
みんな利用するようになった。

  まさに、グループウェアの成功例!

  2004年1月にスタートした予定表「みんなのカレンダー」だが、
2009年になっても現役で活躍しています。


まとめ グループウェアの導入の成功事例を取り上げました。 正直な所、部長から依頼がきた時は「失敗に終わるかもしれない」 と思いながら導入しましたが、予想を良い意味で裏切った結果になりました。 メールでの連絡だと、ゴチャゴチャして整理が大変な事に加えて、 導入したシステムが、使いやすかったのも、重要な部分だと思います。 成功の要因は、使い勝手の良さ、手間が省けるといった所でしょう。 業務命令で、強制的にIT化を進めると、絶対に、反発が来ます。 しかし、今回のように、強制しなくても、みんなが便利だと思い使い始め、 他部署までが自主的に利用したいという、まさに、IT化を進めていく上での 理想的な形だと思いました。

次章:「Linux、Windowsのファイルシステム入門」を読む
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