システム奮闘記:その12
携帯でのWeb検索の利用者増加が増えない!!
(2002年9月7日に掲載)
はじめに
「システム奮闘記:その10」(携帯3社のコンテンツ作成物語)で
パソコンと携帯3社で閲覧できる、顧客向けデータ検索システムを構築したが・・・
利用者が増加してへん!!
というわけで、利用者が増加しない原因を探る話をしたいと思います。
携帯でWeb検索を可能にした経緯
携帯電話。ご存じの通り、通話だけでなく、ホームページも見れる。
パソコンがネットにつながっていなくても、携帯さえあれば、ネットに接続できる。
特に、爆発的な普及があるだけに、巷では、コンテンツ・ビジネスや、
携帯ビジネスなどが声高らかに叫ばれている。
そして次の事を思い、意気揚々だった。
意気揚々だった私 |
この携帯コンテンツを機会に、携帯の利用頻度を分析して、
携帯の接続数が多い場合は、ネット販売システムへの応用や、
場合によっては新しいサービスへの活用を見い出そうと考えた。
それ以外にも、電話での問い合わせが減り、FAXを流す手間が省けるなどの
業務効率化や、FAX代の節約の効果があると期待していた。
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それ以外にも、
新しいビジネスへの開拓と業務改善の問題を解決してくれる!!
まさに話題の携帯ソリューション!!
そんな期待を膨らましながら、Webデータ検索で
携帯3社でも閲覧可能にした。
パソコンでも携帯3社でも閲覧できる検索システム。
携帯でどれくらい見てくれるか、社内でも意見は別れた。
社内で意見が別れた |
楽観的な 人達の意見 |
結構、見やすい。手軽なので便利。
一度、使うと便利さがわかる。
お客さんの中で、インターネットを使っていない所も多く
パソコンで閲覧できないお客さんが携帯を活用してくれる。
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否定的な 人達の意見 |
例え便利だったとしても
電話の場合だと、お客さんの勤務先の電話代だけど
携帯だとお客さん個人の自腹になる。
自腹を切って携帯を使うよりかは
使い慣れた電話を使う方を選ぶ。
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きれいに意見が真っ二つに別れた。
ただ、楽観的な人達も否定的な人達も、共通していたのは
パソコンでも携帯でも良いから
Web検索の利用者が増加して
電話での問い合わせが減って欲しい!
だった。
電話での問い合わせが減る事は、電話対応が減るため
業務軽減になるのだ。これを歓迎しない人はいないのだ。
Web検索システム開始
さて、Web検索でのデータの提供が始まった。
このデータ提供サービスは、お客さんから電話で問い合わせがあると、
いつもデータをFAXで流していた。
そこで、宣伝のため、データと一緒に検索システムの案内状もFAXした。
しばらくは、お試し期間ということで、お客さんに無料でパスワードも教えた。
そして、アクセス状況を分析するために、統計をとることにした。
単なるアクセス・ログだけでは見にくい上、分析もしにくいので、
Webを使って、分析したい日の、機種利用頻度のグラフと、時間利用分布のグラフ、
過去の累計の機種利用頻度のグラフと、時間利用分布のグラフも出す事にした。
視覚化したら、見やすくなる。
ある日の事。一日のアクセス件数が122件に達していた。
一日、多い日でも10件ぐらいだったのに、122件は異常な数だった。
アクセス・ログを見ると116件は、同じお客さんでパソコンでアクセスだった。
アクセス時間を見ると、2時間かけてデータをとっていた。
恐らく、データをとってはプリンターに印刷させていたと想像できる。
プロバイダーのドメインから地名までわかったため、数ヵ所のお客さんに絞られた。
その話を担当部長にすると、部長は「こんなバカな事をするのは、あそこしかあらへん。
全く、タダだからといって、根こそぎ持っていく奴があるか。」と言った。
ちなみに、データは全部で約3500件ある。編集するのは労力がかかっている。
それを、タダだからと言って根こそぎ持っていかれるのでは、たまったものではない。
根こそぎデータを持っていったお客さんの話を、担当のO主任に話すと
呆れるのを通り越えて「最近の中でも、一番当りの事件やで!」と笑い出した。
O主任は続けて「よっぽど、暇やったんやなぁ、あそこのお客さんは」と。
確かに、2時間かけて根こそぎデータを持っていくのは、暇な時しかできない芸当だ。
一週間もしないうちに、今度は別のお客さんが40件のデータを持っていった。
それ以後も、20件くらいデータを持っていくお客さんは絶えなかった。
担当部長は「一体、何考えてんねん」と言っていたが、
O主任は「今まで、電話でデータ全部くれと言ってきた厄介なお客さんが
何も言わずにデータを閲覧してくれるから、楽でええと思うで」と言った。
なるほど、そう考えると、厄介な事を言ってきて、グチグチ言われるよりかは
勝手に持っていってくれるので助かる場合もある。
さて、携帯での閲覧状況を見てみると、あまり振るわない。
だいたい2日に1度、携帯からの接続があるぐらいだった。
私は、携帯からの接続を見込んでいただけに、結果にガッカリした。
悲しいことに、携帯利用に否定的な人の予想が当ってしまった!!
ちなみに、4ヶ月間の収集データを見てみると
過去4ヶ月間の機種別・接続件数累計データ |
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だいたい携帯での閲覧率は5%。
その携帯も i-mode が大半を占め、J-SKYとEZWebは少ない。
4ヶ月間で1000件以上の接続なので、一見、電話が減っているように
思われるかもしれないが、実は、思ったほど、電話が減っていない。
そこで統計をとってみることにした。
うちの会社、データの提供は土日もやっている。
土日の接続状況の記録をとっているので、それを元にしてみた。
電話での問い合わせ平均件数 |
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システム運用前 | システム運用後 |
土曜日 |
22.8±4.5 | 24.7±3.5 |
日曜日 |
13.6±3.5 | 15.8±3.8 |
集計データには、ばらつきがあるため、平均値の後ろに
標準偏差(1σ)の値を入れました。
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うーん、どう考えても電話が減ったとは言いがたい。
むしろ・・・
電話での問い合わせが増えている傾向がある・・・。
全く困ったもので、電話が減らないと業務効率化にならない。
ある日、上司が次の事を言った。
お客さんにインタネット検索システムの話をしたら
知らないという返事がきたで!
広報活動が、あまり進んでいない感じがした。
そこで私も、お客さんからデータの問い合わせの電話があったら
インターネット検索はご存じですか?
と尋ねてみる事にした。
お客さんからの回答を、いくつか紹介すると
お客さんからの回答の内容 |
その1 |
知らへんかった |
その2 |
うち、インターネットにつないでないねん |
その3 |
ネットで検索したけど、該当のもん、あらへんかった |
回答の内容から次のような問題点が浮かび上がってきた。
上の回答から浮かび上がった問題点 |
その1について |
宣伝不足を反省・・・ (--;; |
その2について |
止む得ない。
でも、携帯での検索を使って欲しいと思った (^^;; |
その3について |
最新データをできるだけ入れるよう
関係部署に要請にしないとと思った (--;; |
携帯での検索を可能にしたにも関わらず携帯での利用が少ない。
ここに注目する事にした。
携帯での閲覧が少ない理由を考える
上司が次の事を言ってきた。
上司が言った事 |
お客さんが、うちまで電話してきて内容を伝えるまでの電話代と
データ受信のためのFAXの用紙代を考えると
パケットの方が安いと思うんやけどなぁ
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確かに、データの提供の際、お客さんにかかる費用的は
携帯のパケット代に比べると電話での依頼の方が高くなる。
そして社内からも次のような声が出てくる。
携帯が普及しているのに、なんで利用が少ないの?
そこで、お客さんが電話を使いたがる理由を考えてみた。
次の事ではないかと思った。
私が考えついた事 |
(1) |
お客さんが電話で伝えると、データはFAXで流れる。
お客さんはそれを見るだけで良いし、データの保管もできる。
パソコンの場合、プリンターがあれば印刷できるが、プリンターがない場合は、
その都度、紙に書くか、再度、接続する必要があり手間になる。
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(2) |
電話代、FAX用紙代の方がパケットより高くても、
お客さんの勤務先の経費だから、お客さんにしてみれば
痛くも痒くもない。
それよりも、お客さんにしてみれば、携帯で、
わざわざ自腹を切ってまで、手間のかかることをしないと
アカンねんとなる。
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お客さんにとってデータ取得の際、どっちが高いかが問題ではく
会社経費か自腹か
なのだ。
そう考えると、携帯を使ったネットビジネスの場合、個人客向けでないと
難しいということが、わかった。
でも、私は諦めない。なぜなら・・・
4ヶ月に59件の携帯利用があったから!
なのだ。今後、工夫次第では携帯の需要だってあると思う。
こういう時は、こんな歌を歌いましょう!
苦しくったって、悲しくったって、コートの中では平気なの ♪
(アタックナンバーワン)
さて、データ検索システム。悲観的な事ばかり書いたので、明るい話も。
過去4ヶ月間の時間別・接続数の累計を見てみると
過去4ヶ月間の時間別・接続数の累計 |
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晩8時から朝8時まので夜(深夜)は、電話対応ができない時間帯だ。
そんな時間帯に接続したお客さんの件数は65件だ。
24時間、無休のWeb検索が可能だからこそ
夜中の需要に対応できた事を意味する。
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24時間いつでも利用可能にした点では、Web検索は向いていると思う。
ここで、まとめ!
携帯ソリューション。お客さんが企業や店舗の場合、
パケット代がお客さんの個人の費用となるため、なかなか使わないと思われる。
お客さんへのサービスを考えた場合、夜間などのサービス提供が可能なため、
携帯ではなくても、ネットを使って閲覧してくれるお客さんがいる。
サービスの向上にはなったと思う。
携帯ビジネスは難しい。
また、ネットを使っていないお客さんを多く抱えている場合、
電話での問い合わせなどが、なかなか減らないため、業務の効率化が進まない。
なかなか一筋縄ではいかないだけに難しいと思った今日この頃。
補遺 (2002年10月9日)
「ほい」と書くと「ゴキブリほいほい」をイメージしてしまうが、真面目に「補遺」
このページを読んだ、中学以来の友人から、こんな指摘を受けた。
友人からの指摘の内容 |
データを検索したりする場合…
電話による音声通話だと,顧客は自分が調べたいモノを言うだけで良い.
データの検索は,相手がやってくれる.
だけど,計算機や携帯経由の場合,顧客は,わざわざ自分でデータを探さないといけない.
例え,ページをどんなに検索しやすく作ろうとも,客にとっては,手間が増える.
つまり,顧客側に検索の手間と時間,つまりコストを負わせると言うこと.
電話での問い合わせが減って自社が省力化が出来ると言うことは,
顧客にコストを肩代わりさせているということ.
そういう意識,ちゃんと持っています?
なんか読んでいてね,「顧客側のコスト」についての計算が
あまり出ていないような気がしたので,ひょっとしたら,
そういう意識が抜け落ちているのかな?
だから,菅さんの想定する携帯向けサービスは,夜間早朝の「サービス追加」にはなっても,
昼間の固定電話の「サービス代替」にはならないと思う。
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うーん、直球勝負で耳が痛いが、的を得ている。
対策を考えねば、いけないと思う今日この頃・・・。
次章:文書管理システム構築を読む
前章:PostgreSQLとMS-Accessとの連動までの長い道程を読む
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